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Racing

グッドウッド「スピードの聖典」

Goodwood Festival of Speed

文 Peter Lyon                      今回はドライバーの眼で興奮を味わった!

撮影 Julian Mackie, Peter Lyon

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世界一のモータースポーツの

祭典に密着取材

づかないうちに心拍数がかなり早まっていた。後2台で自分の番が来る。フォードGTとDB9だ。ここグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでの一番の見どころは、何と言っても、全長1.8kmのヒルクライム。このなだらかな昇り坂は、英国の貴族のなかでも代表的なマーチ公爵の領地にある。マーチ公自らが主催する恒例のフェスティバルで、今年僕が乗ることになったのは、この祭りのためにニスモ本社が特別に用意したフェアレディZのSチューン。DB9が第一コーナーに消えて行った。いよいよ、僕の番だ。数千人の観客が見守るなかだ。格好いいスタートを決めたい。

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「できる限り高回転を回して観客にこのV6のエンジン音を聞かせて欲しい。あ、それにスタートでぜひバーンアウトしてね(タイヤをスピンさせ白煙を上げること!)。ここはグッドウッドだからね」と日産広報に言われた。カーメーカーにそんな「乱暴」な走りを『頼まれた』(?)のは初めてだった。勿論、喜んでお受けした。

ESPのトラコンを消して5500回転まで回してみる。スターターの合図が来たら、クラッチをドーンと離す。リアタイヤがスピンして白煙をあげる。路面が多少左に傾斜しているので、Zのリアが流れてしまう。少しカウンターを当てる。スピンしているポテンザS03が、だんだんとグリップを取り戻し、速度が上がっていく。第一コーナーの入り口までに130km/hは出る。このV6の吹き上がりがいい。ブレーキをかなりハードに踏むと、制動力に驚く。日本で乗ったSチューンよりレスポンスがいいし、コーナーでロールしないフラットな姿勢がありがたい。
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第二コーナーから立ち上り、最初の歩道橋をくぐると3速でレッドラインまで回し、160km/hぐらいで走行していた。二つめの歩道橋が見えてきた時に、パドックで知り合った人のアドバイスを思い出した。その「人」とは、伝説的なロックバンド「ピンク・フロイド」のドラマー、ニック・メイソンだ! 彼が注意してくれたこと、つまり、二つめの歩道橋を左ブラインドコーナーのブレーキング・マーカーにするように、という言葉を僕は忠実に守った。

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ヒルクライムより刺激的なのは

パドックからスタート時点までの徐行

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さて、そのメイソン氏は、所有する20台もの名車のなかから、当日はフェラーリ512BBLMに乗った。僕の頭が取材の内容でいっぱいじゃなかったら、メイソン氏がちょうど1週間後に出演したロンドンはハイド・パークでの大コンサート「ライブ8」のチケットを頼めばよかったと、後悔している。それはともかく、左コーナーから加速すると、より狭いワインディングが続く。Zのブレーキングを注意しながら、ようやくフィニッシュラインを超える。

僕が出たスーパーカー・クラスでは、ヒルクライムのタイムは計られなかったけど、自分の時計で計った限りでは60秒ぐらいだった。ヒルクライムそのものは限りなく刺激的だったけど、スーパーカーのパドックからスタートまでのスロー・ランは、まるで夢のようだ。というのは、30台のスーパーカーがコンボイを組んで、数千人のファンの間をゆっくりと抜けていくから。まるで、誰かが僕の両腕にアドレナリンを注射したような興奮が体を突き上げる。その時に印象的だったのが、ファンの眼だ。皆、興味津々。

僕のZを見た12歳ぐらいの少年が「パパ、あのホイールを見てよ!ローターがデッカいね」と言う声が間近に聞こえた。あの子は、きっとグランツで育ったに違いないと思った。また、不思議なことに、僕が乗ったZは、前を走ったDB9と同じ、いやそれ以上にパチパチ写真を撮られた。この派手なエアロパーツ付きのZはかなりの人気もの。スーパーカー・クラスでも決して恥ずかしくない存在だ。

 

憧れるレーサーに会える! 新車の初走行も見られる!

それこそがグッドウッドの魅力だ。ファンたちは、クルマの外観が格好と思えば、注目し、写真を撮ったりする。Zを狙ってシャッターを切る人達があれだけいたことは、名だたるスーパーカーに混じっても引けをとらない、いや、それ以上に新鮮な魅力があるということだ。このフェスティバルの数ある楽しみのひとつは、これらのクルマに乗るために、全世界から歴代レーサーや現役パイロットがやってくること。グッドウッドは、4輪と2輪ア・ラ・カルトのセレブレーションだ。モータースポーツ界の一番おいしいところが集中している。自動車メーカーのお祝いもあれば、新型車の初走行もある。

例えば今年は、スクデリア・フェラーリが誕生してから75周年だし、BMW3シリーズが登場してから30周年。そしてまた、グッドウッド邸宅の前にはメイン・スポンサーのディスプレイがそのメーカーの栄光にスポットライトを当てるのが恒例になっている。今年はF1参戦40周年を迎えたホンダが5台の歴代F1マシンを展示した。それに、あのスターリング・モス選手がベンツ300SLRでミッレ・ミリア優勝を果たしてから、50年が経つ。だから、その本人が同車に乗ってヒルクライムに挑戦した。それもこの祭りのひとつの魅力だ。過去から現在、近い将来までのヒーロが一カ所に集まる。元F1王者エマソン・フィティパルディが当時の優勝マシンに乗ったり、現在のF1のホープ、フェルナンド・アロンソ選手が今年のF1マシンで暴走。

ファンにとっても最高の環境だ。他のレースやイベントではできないことが、実現してしまうもは、グッドウッドならでは。アットホームな環境で自分の憧れるレーサーにも会えるし、パドックで有名人とも接触できる。しかし、このイベントは、新車を発表する会場としても重要になりつつある。

 

今年は何と12台の新車が、このグッドウッドという晴れの場で初走行を行った。アストン・マーチンV8ヴァンテージ、アルファロメロのブレーラ、偽装されたジャガーXKなどがファンを魅了した。また、マーチ公爵のリクエストでピニンファリーナとマセラティが、今年のジュネーブで発表したバードケージ75に初めてエンジンを積んで走らせた。

豪華パーティ、名バンドの演奏

そしてジャンボ機の驚愕の旋回

2日めの土曜日の夜には、グッドウッド邸宅で豪華パーティが開催される。そこには、歴代そして現役のレーサー、有名人、自動車メーカーの役員、自動車プレスなど、500人以上が招待される。ディナーが終わると、我々ゲストたち庭園に出るように促された。そこでは花火が上がり、同時に、水の飛沫のスクリーンに幻のような映像が映写されていった。昔のレースカーの映像が、次々と夢のように映っては消えていく。

 

そして、それが終わると屋内の舞踏室で、サプライズ演奏者の登場だ。今年は70〜80年代にヒットしたブライアン・フェリー&ロキシー・ミュージックが、特別演奏を披露した。毎年、イベント主催者のマーチ公爵が有名なバンドを招待する。去年は、デボラ・ハリー、その前年はザ・プリテンダーズが演奏した。

ところで、最終日の午後4時にまた信じられない光景を見た。そしてその時、イギリスの貴族のとんでもない人脈に関心した。というのも、トルネード戦闘機が何回か会場の上空を飛び、さらにその数時間後、何と今度は南アフリカ航空のジャンボ機が驚くほどの低空を、低速でゆっくりと旋回していた。

これらを見ると、あのニック・メイソンでも圧倒されるという。だから、彼のような有名人と15万人ほどのファンが毎年駆けつけてくる。これは間違いなく世界一のモータースポーツの祭典だ。自動車だけでなく、人間が作った美しい乗り物とスピードを礼賛する超一流のフェスティバルだ。


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